横浜家系ラーメン大和家

株式会社DADAは、家系ラーメン「大和家」「田田」を10店舗展開する企業。親会社となる株式会社AZismホールディングスは他にも4法人をかかえ、リサイクル、マンガ喫茶、フィットネス、葬儀などを展開。今年は海外進出も果たし、11月には串カツ屋もオープンした急成長企業だ。今回、27年前に事業を起こした和田敏典社長に話を伺った。

―本当に幅広い事業を展開されていますね

よく、皆さんから「和田さんは何屋なの?」とか、「なんでそんなにいろんな業種を展開しているんですか?」とか、質問をされることはよくあります。ただ、僕の中では全然違う業種だとは一切思っていなくて、全く同じ業種を選んでいます。すべてに対して、お客様の顔が見える仕事に価値を感じるので、そういった意味では同じ業種だと思っています。

さらに、お客様の顔が見える業種の中でも、専門性のある業態でないと取り組みません。飲食店にしても「ラーメン」「串カツ」という専門性のある業態ですし、フィットネスも40代50代を専門にしたフィットネスを展開しています。

もう一つ、トレンドも大事にしています。ラーメン屋をずっとやってきて感じたのですが、今は時代が変わってきています。昔はアナログな口コミでラーメン屋の評判は広まっていましたが、今はインターネットの時代です。らーめん次郎さんのように、「こんなとこにお店があるの!?」と驚くような立地でも、インターネットで興味を持って、場所を調べてお客様が来られるから、初日から行列ができる。デジタルの普及で情報の拡散スピードが圧倒的に変わってきたと実感しました。葬儀を始めたのもそうした世の中の変化、トレンドの変化において、昔と違って今は「終活」とか「エンディングノート」とか、亡くなる前の準備をすることがメジャー化してきましたし、今後もっと広がると思ったのでスタートいたしました。

そもそも事業を27年前に起こしたのが、レンタルビデオ屋でした。当時は貸しビデオ、と言っていましたが。それまでは電気屋で働いていたのですが、当時ビデオデッキがどんどん売れていました。皆さん、TV番組の裏番組を録画したり、子どもの成長を録画して、ビデオデッキで再生していました。そんな中、世の中の流れがどんどん変わってきて、映画を家で見るようになってきた。ただ、当時は高かったんですね。映画のビデオを買うと1万円以上した。そんな時、ビデオを貸す、というトレンドが出てきて、自分で起業することになりました。

こうした、「お客様の顔が見える」「専門性がある」「トレンドがある」という3つの条件を満たす事業であれば、今後も積極的に展開していきたいと思っています。

―今回、ラーメン屋の店長さん10名が「7つの習慣」研修を受講されましたが、そもそも社長と「7つの習慣」の出会いはどんなきっかけだったのですか?

僕がフランチャイズ加盟して運営をしているフィットネスチェーンの店長研修で「7つの習慣」を教わりました。僕はオブザーブで参加をしましたが、コンパクトな設計だったので、その後、自分で調べて3日間の研修を見つけ、お金を払って参加し、勉強しました。

僕は、実体験から学ぶタイプです。自分で体験したことから学び、その後から本を読むと、自分が感じたことが書いてある。「7つの習慣」も同じで、研修に参加してみて、「あっ、そうそう!」「これ分かる!」みたいな感じでした。ただ、「分かる!」と思っても、自分の中でぼやーっと分かっているだけで、いうなれば「自分ルール」、自分だけの行動規範みたいになっていました。ただ、「7つの習慣」研修に参加してみて、それが言葉として、体系立てて整理されていると感じました。たとえば「主体的である」とか「WIN-WINを考える」とか。これは人に伝える時にすごく便利だなと感じ、それからもっと自分自身で勉強してみようという気になりました。

―ラーメン屋というと個人的には、いかに美味しいラーメンを提供するかが大事で、味を追求する職人的なお仕事のようなイメージがあるのですが、どうして「7つの習慣」研修に参加させようと思われたのですか?

ラーメン屋は一般的には飲食業というカテゴリに入ってくると思いますが、僕はお客様に喜んでいただくために事業を展開していますので、ラーメン屋もサービス業であると考えています。ですから、味で言えばうまくて当たり前。じゃあ、うまければいいかと言うとそうではなくて、きれいな店内であったり、挨拶の気持ち良さであったり、サービスの深さであったり、そういうこと全体を含めてラーメン屋の仕事だと思っています。

ですから、店長に「こういう時はこうしないといけないよ」と指導をする際に、先ほども言った通り「7つの習慣」が「共通言語」になっていると、すごく円滑なコミュニケーションがとれるだろうなと。たとえば、最近「WIN-WIN」という言葉が私や店長たちの中でよく出てくる言葉なのですが、こういう共通言語で話をするとすごくコミュニケーションしやすいし、店長たちも腹に落ちやすいと実感していまして、こういう効果を期待して「7つの習慣」研修をいれました。

実はこれまでは費用面などがかさむと思い、なかなか重い腰があがらなかったのですが、FCEトレーニング・カンパニーさんの研修は2日で7万6千円という、トライしやすい金額でしたので、実際に前に進むことができました。

―実際に効果は実感されていますか?

「7つの習慣」用語はみんな使っています。これまで「パラダイム」なんて言葉が出てくることは絶対になかったのに、トークノートの中でもどんどん出て来ます。

トークノートって、社内フェイスブックみたいなものです。全員の社員の顔が見える環境だったらそんな仕組みは要らないのですが、みんな店舗がバラバラなので意思疎通をするのが大変なので、トークノートを活用しています。

その中で、「俺、今まで固定概念で見てました。自分のパラダイムが変わりました」とか、そういった話が店長達から出てきているので、確実に意識はしているし、確実に社員の意思統一がしやすくなっています。

思惑通りに進んでいるので、今、トレーニング・カンパニーさんには、一回研修を受けたことを点で終わらせずに、継続させていくためのサポートをしていただいています。

―こうした人材育成の取り組みを継続させていくために、御社ではどのような活動を行われていますか?

先ほどのトークノートの取り組みもそうですが、僕は、コミュニケーションの機会をいかに作るかが重要だと思っています。「7つの習慣」の言葉は活用していますが、僕は「7つの習慣」イズムではないので、あくまで手段として、道具として活用しています。

ですから、トークノート以外にも、たとえば月イチ会という会を開催してコミュニケーションをとっています。これは、とくに議題を決めずに月一回集まって、ざっくばらんに夢を語ったり、目の前で起きていることを共有する会です。

先日台湾に進出したのですが、それも月イチ会で海外に興味のあるメンバーを集めてみたり、新人社員が多くなってくれば、新人社員を中心にした月イチ会を開催しよう、といった形で進めています。

来年の2月13日にチキンを出すお店をオープンするのですが、それも月イチ会で話が進みました。うちの社員はラーメン屋として独立することを目的に入ってくるのですが、働いているうちにだんだん夢が変わってきていたり、「実は居酒屋がやりたかったんです」なんて話を月イチ会では聞けるから、じゃあ、お店を出そうという話にもなります。すぐに取り組むことはできなくても、僕の頭の中にそういう社員の情報が入っていれば、何か縁があった時に取り組めます。

ですから、他にも店長会、店舗ミーティング、新年会、決起会、バーベキュー大会といったコミュニケーションをとる場をたくさん作り、その中で共通言語の「7つの習慣」を使ってもっともっと円滑なマネジメントサイクルを回したいな、と思っています

 

実際に研修を受けた店長達は、どのように感じているのだろうか。大和家唯一の女性店長、日野店の大橋店長にもお話を伺った。

―大橋さんはどのような仕事をされているのですか?

この会社に入って、4年位になります。この会社のラーメン屋の店長としては、面接を受けたのが一番最初だったみたいです。まだ最初なのでお店自体がなくて、社長の知り合いのラーメン屋で研修を受けて、1か月ほどしてできた1号店の大和家昭島店に入った、という感じです。

―7つの習慣を知った最初のきかっけを教えていただけますか?

うちの会社では、社員になると一番最初に「社長塾」に参加をするんですね。社長から直接1日がかりでこれまでの会社の歩みとか、社長の想いとか、そういったことを聞く講習です。その時に1冊ずつ7つの習慣の本をもらって、「感想文を書け!」みたいな感じで、それで知ったのが初めてです。

私あんまり本とか読まなくて、その時は興味のあるところしか読んでなかったと思います(笑)。

―それから数年たって、会社から「7つの習慣」研修に参加するように言われた時はどうでしたか?

最初は「えっ!?」って思いました(笑)。場所が近ければまだよかったんですが、会場も遠かったですし、1日9時間くらいあるので、「長いな・・・」と思いました。たぶん他の店長もあんまり乗り気じゃなかったんじゃないかな、、、と思います。

ただ、最初に5人の店長が研修を受けに行って、その後私を含めて5人が研修を受けたんですけど、トークノートっていうのをうちの会社では使ってまして、それを見てると最初に受けた5人の評価が結構好評で、勉強になるのかなぁと思いました。

―そして、実際に参加してみての感想はいかがでしたか?

最初の感想としては、「うちらだけ浮いてるんじゃないかな」と思いました。みんなスーツを着ていて普通の企業の方々なのに、うちらは私服で、自己紹介するときにも「ラーメン屋の店長で」みたいな。皆さん社長さんばかりだったので、場違いじゃないかという感覚でした。もっといろいろ経験を積んでから出るべき研修じゃないの?という感じでした。

―結局、最後までそんな感じだったのですか?

いえ!逆に、「あっ、社長さんでもこんな悩みを抱えられているんだ」みたいな。最終日に、「社員が辞めると言っているのですが、研修の内容を活かして今後自分を変えようと思います」とおっしゃられた方がいらっしゃって、そういうお話を聞くと、今まで社長さんというと人間としての器が違うような気がしていたんですけど、みんな悩むところは一緒なんだなって感じました。

最初は場違いだなって感じたんですけど、研修の内容が社長のためにある内容というわけでもないですし、最後はそういう気持ちではなかったですね。

―研修を受けて、今意識していることはありますか?

パラダイムと傾聴、信頼貯金とかはすごく意識するようになりました。たとえば、プラス思考に考えるように意識していまして、これまでラーメン屋で女性一人でやってきたので、麺をあげたりするのも、どうも男性に劣っているんじゃないか、とか、お客様にもそういう風に思われているんじゃないかな、とか思ったりしてたんですけど、そういう考えをパラダイムシフトしました。あと、嫌なことがあっても、良い風にとらえるようにしているとか、そんなことを意識しています。

あとは、、、人の話をよく聞こう(笑)。

つい口出しをしてしまうことが多かったんですが、できるだけ人の話を聞いて、途中で口を出さないようにしたりとか。

―大橋さんの今後の将来において、「7つの習慣」はどんな風に活用できそうだと考えていますか?

「7つの習慣」が一番活かされるのは、今の現状かなって感じがします。仕事をしている、という環境であったり、店長という今の自分の役職であったり。

一般の社員が受けても、もちろん全く役に立たないという事はないとは思いますけど、店長とか、自分に部下がいる状態でうまく発揮されるんじゃないかな、という感覚があります。

―では、今後新しい店長さんが入ってきたときに、この研修をお勧めしますか?

研修を受けた方がいいとは思いますけど、最初っから受けさせるべきではないというか、それより、ある程度店長としての経験を積んで受けた方がいいんじゃないかって思いますね。

始めから知識を身に付けておいた方がいいのかも知れないんですけど、「今まで自分で考えてたことは違ったんだな」とか、「あ、やっぱりそうだったんだ」とか、今までを振り返られるという意味では、ある程度経験を積んでおいてからの方がいいかな、と思います。

最後に和田社長に改めて、今後のビジョンについてお伺いした。

―今後のビジョンについて教えてください

これは2年前に作った言葉なのですが、「時流適応し続け、人間成長できる企業創りを目指す」というのが企業の方向性として最終的なゴールだと思っています。

大きな企業になることが僕らのゴールではないです。どんなに世の中が変化してもとにかく生き続ける、永続企業になることだと考えています。

今ホールディングス化して子会社が5つあるのですが、経営できる人間を一人でも多く育てることが、その人数の分、社内を盤石にします。先ほども言いましたが、僕は「お客様の顔が見える仕事」というのが軸にありますが、僕以外の人間が経営をする際には、その人がその時代に感じるジャッジをしていけばいい、そんな風に考えています。

企業が永続できるように、人材育成も、仕組みも、勉強も、すべてその軸に基づきながら経営していきたいなと思っています。